見事な雪の郷土の地口精神(秋田県 秋田音頭)


日本海に面した秋田県は、佐竹20万石の昔から、冬は雪におおわれ、陽の射す日は数えるほどしかありません。

冬の間、家に閉じこもることを余儀なくされると、炉端の話に花が咲き、艶笑謂や、ユーモラスな地口がもてはやされるようになるのかもしれません。「民謡でない民謡」と言われる『秋田音頭』は、そのような秋田が生んだ傑作の一つです。

 ♪ヤートーセー ヨイヤナ ア キタカサッサ
  トコ ドッコイ ホラ ドッコイナ ホラ
  いずれこれより御免こうむり 音頭の無駄を言う
  アー ソレソレ
  お気に障りもあろうけれども さっさと出しかける
  ア キタカサッサ
  トコ ドッコイ ドッコイナ

『秋田音頭』は、地口音頭とも言われます。1663(寛文3)年)、徳川4代将軍家綱の頃、佐竹藩主義隆が、手踊りを見たいと言い出したのがきっかけで、柔術の型を取り入れた踊りが考案され、その時に唄われたのが、『秋田音頭』だといいます。

何しろ、地口が主体の唄だから、節らしい節はありません。これに三味、笛、太鼓、摺り鉦が加わって、陽気にはやし立てて座を盛り上げます。「秋田名物八森鱒 男鹿では男鹿ぶりコ」の文句が有名ですが、こんなのもあります。

 「お前たち お前たち 踊りコ見るたて あんまり口開ぐな
  今だはええども 春先などだば 雀コ巣コかける」

軽く椰楡して、ユーモラスに締めくくる辺りに、秋田弁の特徴がにじみ出ています。

青森県出身のタレント伊奈かっぺいは、『青森音頭』を歌うという前口上で、『秋田音頭』を歌い、歌詞の最後に「それは隣の県だべさ」とつけて、大いに笑わせていました。その地口精神が、この唄の身上だといえるでしょう。

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